なお貯水池築造にあたり、計画当初の候補地は丹波山・川野・麦山・河内・水根(みずね)・中山(なかやま)・梅久保(うめくぼ)・数馬(※1)・古里(こり)の9地点であった。
このうち数馬・古里は商業中心地や行楽地・景勝地を水没させるため、また丹波山・川野・麦山は流域面積が狭いため、中山・梅久保は堰堤敷に断層が存在するため候補地から外れた。
のち河内が適当として事業認可の手続きを行っていたが、地質調査により水根付近のほうが立地に優れていたため、この地点に建設されることになった。
なお移転世帯が生じた地区は以下のとおり(一部移転も含む)。
・原(はら)
熱海・出野・原・湯場
・河内(こうち)
河内・河内向・川崎・あずまい(あづまい)
・川野(かわの)
南・麦山・本田・大づく(大津久)・川野・すそおり・青木・矢久(箭弓)・庄の指(しょうのさす)・岫沢・日指
・留浦(とずら)
小留浦・留浦・坂本(さかもと)・雨降(あめふり)
・丹波山村
鴨沢(かもさわ)
・小菅村
金風呂(かなぶろ)
移転世帯数は、小河内ダム事務所資料より昭和32年現在で945。移転先の内訳は以下のとおり(市町村名は現在のものに変更した)。
・東京都
町内230(うち旧小河内村地内135)・青梅市97・羽村市25・福生市57・日の出町15・昭島市147・立川市73・八王子市55・都区部34・その他51
・山梨県
丹波山村63・小菅村6・八ヶ岳19(※2)・その他6
・埼玉県
入間市27・その他6
※1 檜原村の数馬(かずま)地区のことだろう
※2 原文ママ。高根町【現・北杜市】清里付近か
ダムサイトの「奥多摩水と緑のふれあい館」の敷地には、水没地から移設した多数の石造物が置かれている(写真3〜)。それぞれの元の位置は不明だが、解説により推測が可能なものもある。